斉藤智子
サイバー攻撃を受けて電子カルテシステムが使えなくなった徳島県つるぎ町の町立半田病院が4日、システムを復旧し、全13の診療科で約2カ月ぶりに通常診療を全面再開した。小児科と産科以外で中止していた救急や新規患者も再び受け入れられるようになった。
この日訪れた患者らは、再び動き始めた再来受付機で次々と受け付けをした。隣町から来た男性(59)は「田舎では貴重な病院。ほっとしている」と話した。
同病院の電子カルテシステムは昨年10月末、データの復元と引き換えに金銭を要求する「ランサムウェア(身代金ウイルス)」に感染。病院内の十数台のプリンターから英文の「犯行声明」が印字された。8万5千人分の患者データにアクセスできず、会計システムで診察費の請求もできなくなったため、一部の診療科をのぞき、新規患者らの受け入れを中止した。
同病院は、交渉には一切応じず、従来のサーバーを復旧。地域の要望を受けて11月中旬に小児科と産科を再開し、受け付けや会計処理を担う医事会計システムや電子カルテシステムを順次、使えるようにした。今後、検査機器などとの接続や、システムを使えなかった約2カ月間のデータ入力などを進めるという。
今のところ、個人情報が流出した情報は寄せられていないという。病院事業管理者の須藤泰史医師は「電子カルテが見られるとわかったとき、涙が出た。休みなく出勤してくれた仲間と喜んだ」と語った。
丸笹寿也事務長は「有識者会議を設けて、原因究明をし、二度と起こらないように対策を講じる」と話した。減らしていた入院患者や手術も、以前の水準に戻していくという。(斉藤智子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル